平成12年2月、いわゆる「特定調停法」(特定債務者の調整の促進のための特定調停に関する法律)が施行され、従来から行われてきた「債務弁済協定の調停手続」を改良した「特定調停制度」が誕生しました。
カード会社・消費者金融会社からの借入を繰り返すうちに、いつの間にか利息で借金が膨らみ、返済の為に新たな借入先を探すようになった、気が付けば借入先が10社にものぼり、もう、どこから幾ら借りているのかさえ把握できない状態になってしまった…
特定調停とは、上記のようないわゆる多重債務状態に陥ってしまい支払不能に陥る可能性がある人を、経済的に再生する方向へ導くため、簡易裁判所が間に入り、債務整理をする制度です。
★利用のポイント
@「公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容」での合意
利息制限法を超える利息(過払分)を元本に充当して債務残高を減額し、それでも残った元本を3〜5年以内で分割返済する(将来利息はカットする)という調停案が作成されるケースが一般的です。しかし、3〜5年以内で返済を終えることができない(ほど債務が多額である)場合は、自己破産・民事再生を検討せざるを得ません。
A一部の債務についてのみの申立も可能
つまり、住宅ローンやオートローン、保証人付の債務を除いて、その他の債務のみについて債務整理することもできます。ただし、一部の債権者を相手方とした場合でも、関係権利者の一覧表の提出が必要です。上記@のとおり、調停案は、債務者に対する権利者・債権者全員との関係で「公正・妥当・経済的合理性」を有する必要があるため、調停委員は、関係権利者全員に対する債務の内容を把握しなければならないからです。
B債権者の同意が必要
民事調停の一種であるため、原則として債権者の同意がなければ調停(分割弁済案)は成立しません。但し、遠隔地にいる当事者が出頭できない、内容に不服はないが任意の調停には応じない、等、形式的・実質的に当事者双方が調停委員会での面前で合意することが不可能な場合において、一定の要件を満たす場合には、特定調停法16条(書面による調停条項受諾制度)・17条(調停委員会が定める調停条項)、また民事調停法17条により、利息制限法による引直再計算をした債務残高を分割返済するという内容で、調停委員会が、調停に代わる決定を出すことが可能であり、従来の「債務弁済協定」では民事調停法17条による決定がかなり行われています。
C強制執行手続の停止
調停成立のために必要と認められる場合は、調停手続中の競売手続等債権者の強制執行を停止させることができます。但し、労働債権に基づく民事執行手続は執行停止の対象にはなりません。
★手続の流れ
債権者一覧表の作成
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特定調停申立書の提出
・管轄:債権者の営業所所在地を管轄する裁判所
・添付書類:戸籍謄本・住民票その他、給与明細書・源泉徴収票等
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調停委員の指定
各債権者へ申立があった旨の通知(申立から2〜3日後)
→通知以降の取立は法律上禁止されます
→債権者は取引履歴及び利息制限法による再計算後の債務残高を提出
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調停期日の指定・呼出状の送付
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準備期日又は第1回期日(申立から2〜4週間)
調停委員による事情聴取・調停案の作成、提示
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第2回期日以降
各債権者との弁済協定締結
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調停成立:調停調書作成(確定判決と同一の効力)
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分割返済の開始
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